「Tシャツアート展」
2002.7.19(金)〜21(日)
AM10:00〜PM6:00 最終日はPM4:00まで
ヨンデンプラザ徳島2F ヨンデンギャラリー
徳島市寺島本町東2丁目29
フリーダイヤル 0120・111744
知的障害者通所授産施設「れもんアート工房」
〒771-1401 徳島県板野郡吉野町柿原字シノ原340
tel.088-696-5757 fax.088-696-5755
e-mail:artlemon@giga.ocn.ne.jp

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「Tシャツアート展」によせた私の気持ちあれこれ。

私が「きんこアートクラブ」と称して、様々な場所でいろんな人と創作活動をはじめてもう10年が経った。
子どもたちのための絵画・造形あそび教室を経て、現在は2カ所の知的障害者通所授産施設でのアートボランティア、母校のマンガクラブボランティアなど・・・・。
活動を続けていくうちに、お手伝いをして下さる人も増え、今では、5人のアートボランティアスタッフが交代で通ってきてくれる。
中でも、知的障害を持つ人たちが生み出すアートにはいつも刺激を与えられることが多く、彼らの描く姿勢や作品にいつも魅せられていた。

そこで、今回私たちと知的障害者通所授産施設「れもんアート工房」が企画したのは「Tシャツアート展」。
徳島県石井町にある「れもん」の分場として「れもんアート工房」が開所されたのが約1年前。ここでは、将来的には施設全体をアートの場とし、利用者のアートを何かの形で仕事に繋げていこうという計画のもとに開設された施設だった。現在私はこの施設のアートディレクターとして関わっている。
開所当初から導入されたのは、かねてから計画していたTシャツプリントのための設備。シルクプリント会社の協力で、まず私自身も支援ワーカーと一緒に技術を学ぶことからはじめなければならなかった。

さらに、それまでは利用者との創作活動を楽しむことが、私の役目だと思ってきたのだけれど、ただ創作活動を楽しむことだけではなく、彼らが生み出すアートの中からよりすばらしいものを見い出し、さらにそれを、商品として売り出す方向も考えていかなければならなくなった。

そうなると私自身の考えの中でいろいろな葛藤が生じてきた。
今までのように、創作することを好きになってもらうような活動の中では、売り出せるようなアートは、なかなか生まれてこないかもしれない。
アートクラブのメンバーの中には実際プロとして通用するだろうと思うくらいのテクニックや才能を持つ人もいる。でも、彼らは自分が好きな時に好きなテーマでしか描いてくれない。しかも、彼らにも私にも限られた時間しかない。

でも、開所1年、このTシャツプリント工房としては、そろそろ何かの結果を出さなければならない時期がやってきた。
そこで、イラストレーターとして仕事をしている私は、彼らを自分の仲間(イラストレーター)として使ってみることにしようと考えることにした。彼らが気のむくままに描きなぐったアートやイラストをそのまま使うのではなく、デザイナーの手を借りて、デザインしてもらおうということ。
アート作品として発表するのではなく、商品として売り出していくのなら、それも許されることではないかと。そう考えると、今まで私の中でタブーとしていた彼らの作品に手を加えるという行為が、肯定されたような気がして急に楽になった。

そんなことを口にしているうちに、幸いにも協力してくれるというプロのデザイナーが4人も集まった。私自身もこの時点で、イラストレーターとしてではなくデザイナーとして関わることになる。

協力してくれたデザイナーさんたち

集まったデザインのカンプ

いよいよ、「Tシャツアート展」のためのTシャツ作りが動き出した。今まで貯えていた彼らのすばらしい作品をそれぞれのデザイナーが持ち帰って、柄やTシャツの色を考慮してデザインしてもらい、データの形で持ち寄ることにした。
そして集まったのが100点近いデザイン。さらにそれらを関係者の方に見てもらって意見を聞く会を開いた。彼らが描いた何気ないアートがデザイナーの手で見事に洗練されたものを見て、関係者の方にも感心していただき、私自身もうれしかった。

そのデザインをもとに現在、「れもんアート工房」で、プリント作業にとりかかっている。こうして、できあがったTシャツが売れていくと、イラストレーターとしての彼らが誕生することになる。

刷り上がったTシャツの1部

会期中は、デザイン、プリントされたTシャツ約100枚とその原画30点を合わせて展示・販売する予定にしている。利用者からアートが生まれてTシャツになるまでの過程も一緒に観ていただきたいものだ。

Tシャツカタログ

私はもう長年、アートボランティアとして福祉社会に携わってきたけれど、想像以上に視野が狭い社会のような気がしている。今私がやっている活動に関しても、施設側との価値観が一致しなければとうていやれることではないと思う。

世間ではノーマライゼーションを掲げられて久しいけれど、現実は、まだまだ・・・。障害者、健常者というコトバで表現しなければいけないこと事態、不思議な気がする。
でも、今回ひとつわかったことは、デザイナーやアーティストにとって、彼らが描くアートはとても魅力的で、それは、障害者が描くからというものではなく、同じレベルですばらしいと認めているし、何かの形で役に立ちたいと思っている人は大勢いるということだった。
実際私自身も同じイラストレーターとしてあせりや嫉妬を感じたのも事実だし・・・。
これから福祉社会、とくに授産施設に求められるものは、プロの技術をいかにうまく取り入れていくかということかもしれない。ふとそんなことを想う・・・・。 2002.7.5


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