ぶらり街かど
木沢村(徳島県那賀郡木沢村)

「紙面には出て来ない、取材時のエピソードを盛り込んで、本にしてはどうですか。」ぶらり街かどを楽しみにしてくれているという友人が、うれしい便りをくれました。

今回は、その友人と一緒に、木沢村へ。前日まで晴天が続いていたのに、その日に限って朝から雨、「どんなエピソードがあるのやら?」複雑なわくわく気分で、いざ出発。

目指す方向に見えるのは、真っ白い霧にすっぽり包まれた山々。山道の運転に自信のない私は、おそるおそる車を走らせました。上那賀町に入った頃、案の定あたりは真っ白。どこまでの濃霧なのか見当もつかず、不安な気持ちのまま、とりあえず木沢村役場まで行ってみることにしました。

村役場で、親切に応対して下さったのは、産業企画課の高石道徳さん(34歳)仕事中にもかかわらず、木沢村内を案内してくださるとのこと。申し訳ないなと思いつつ、内心ほっとしながら車に乗せていただきました。

国道から少し上ると、山道の突端にそびえ立つ木製の大風車が見えてきました。春には、風車のまわりに自生する、ドウダンツツジやササユリなどが咲き誇るという自然花木園。ここは木沢村の中心地を一望できる村の一等地です。私にはこの風車、ゆく風を感じながら、やさしく村を見守っているように見えました。

さらに激しくなった雨の中、高石さんは、六月にオープンしたばかりの農村レストラン「いづりは」へ案内してくれました。澄み切った緑の水が流れる大美谷川沿いを走り、手作りの看板を目印に、山道を少し行くと見えてくる赤い屋根の木の家、そこが「いづりは」です。ここからながめる棚田の景色もさることながら、訪れる人との交流も、とても楽しいものです。

時はちょうどお昼時、木沢村ならではの郷土料理を、おなかいっぱい味わうことができました。

雨も上がり、川面に浮かぶ霧が幻想的な帰り道、木沢でのエピソードで大いに盛り上がった私たち。

自然体で暮らす木沢の人たちの、気負いのない、穏やかな人柄は、少々不本意なエピソードも、「それもまたいいもの」と楽しんでしまえばいいということを、気づかせてくれました。おかげで、ずいぶん肩の力が抜けた気がします。

雨の木沢も良かったけれど、今度は、晴れた日にもう一度行ってみたいものです。

1997年7月掲載


思い出して一言

木沢村の取材では、ラッキーな出会いがありました。以前から、憧れていた拝宮和紙の中村功さんに農村レストラン「いづりは」で偶然お会いすることができたのです。

中村さんは上那賀町の山の中で手透き和紙を作り、全国各地で個展を開催している方です。とってもきさくな方でいろいろお話できてほんとにラッキーでした。

その後、木沢村からは、スタンプやキャラクターの仕事をいただき、感謝しています。
(2000.2)


前回 ホームへ イラストマップへ 旅気分のインデックスへ 次回