気ままに旅気分
とくしま動物園(徳島県徳島市)

「やりたいことがいっぱいあるのに時間がない。日々の生活に追われながら、ただただあせるばかり。今年もまたこんな日々が続くのかなぁ 」なんて新年早々イライラしていました。少し気持ちを切り換えようと、ずっと行ってみたいと思っていた動物園へ一人で出かけることにしました。

開園当時は、大勢の入場客でにぎわったという「とくしま動物園」も、冬の平日は人もまばら。動物たちとのんびり過ごすのには最適です。

園内に表示された順路に従って歩いて行くと、人が動物を見ているのじゃなく、動物たちのすみかを訪問する私たちが、動物たちに観察されているような気分になります。動物たちはいろいろな表情で出迎えくれました。

中でも人待ち顔で迎えてくれたチンパンジーのチー子。大勢の人がいるといろんなパフォーマンスを見せるそうですが、私一人じゃ観客不足だったのか、背中を丸めて座ったまま。それでも声をかけるとチラッと振り返ってウンウンウンとあいさつしてくれました。

とくしま動物園では動物の生態別に温帯区、熱帯区、サバンナ区、寒冷区などのエリアに分けて、より自然に近い状態で飼育されています。「動物園は、ただ動物を見せるだけの時代から今では種の保存、社会・環境教育の場となっています。

これからはいろいろなアイデアを出して、来園のたびに新しい発見をしてもらえるような動物園にしていきたいですね」園長の本田武さん(51歳)の話から、新しい動物園運営への意欲がビシビシ伝わってきました。

動物園を子どもの楽しみだけにしておくのはもったいないことです。おとなにはおとなの楽しみ方があります。この日私は、動物たちとのんびり向かい合うことで心が癒されていくのがよくわかりました。

動物園を出て、近辺をドライブしてみることにしましたが、なにやら道に迷ったようで、方角がさっぱりわからなくなってしまいました。辺りは暮れかかり、少々不安になりはじめたころ、小さな木造校舎を見つけました。宮井小学校の八多分校です。そこに通う子どもたちと先生はとても親切に帰り道を教えてくれました。

どうしようもなく気持ちが沈んでいても、ちょっとしたきっかけでうそのように楽になることがあります。この日の私はまさにそれでした。動物たちの豊かな表情と八多分校の皆さんのやさしさのおかげで、出かける前のモヤモヤした気分はすっかり消えていました。今年もなんとか頑張っていけそうです。

1999年1月掲載 


思い出して一言

つい最近動物園のユキ豹が亡くなったというニュースが流れていました。残念です。

私はチンパンジーのチー子とガラス越しにずいぶん遊びました。お話もしました。たぶん回りで見てた人はちょっと危ないおばさんだと思ったことでしょう。(2000.2)


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