街角ウォッチング
 池田町

(徳島県三好郡池田町)

ふと気が付くと、窓から見える大きないちょうの木が黄色く色づき始めていました。以前仕事で行った時には、見上げるだけに終わった箸蔵山、今度は紅葉を眺めながら、頂上まで登ってみたくて池田町へ出かけました。

箸蔵山麓にはロープウエー・リフト乗り場があります。迷わず選んだのはリフト。仁王門付近の乗り換え地点まで約八分、心地いい風の中、鮮やかに色づいた木々を間近に見ながら、ゆらりゆらりと上っていきます。そこから山頂にある箸蔵寺まで今度はロープウエーで約三分、さらに長い石段を上ると御本殿に着きます。

少しの間、落ち葉を拾いながらぼんやり休憩して、下りのロープウエーに乗り込みました。ロープウエーから見下ろす箸蔵山の紅葉もダイナミックで一層みごとです。

せっかくのお散歩日和、まだ帰るのはもったいない。池田駅前に車を止めて駅周辺を歩くことにしました。

駅の回りを見渡すと、まず私の目に飛び込んできたのは、おしゃれなモニュメント。今年八月に完成したばかりのへそっ子公園です。丸いガラス張りの噴水や、全国「池田」サミットの記念に建てられたかわいいカエルたちの石像。とても近代的な風景です。列車の待ち時間に「ぶらっと散歩」もいいものです。

まだまだ池田町散策は続きます。駅前の観光案内所で池田にも、うだつ通りがあることを知りました。駅から商店街を抜けて五分ほど歩くと、へそっ子公園とは対照的な明治の家並みを思わせる風景が見えてきます。

うだつに詳しい、郷土史会の細田義秋さんに案内していただくことになりました。明治時代、阿波刻みたばこで栄えた商家が立ち並んだというこの通り、数々あるうだつの型式や全国的にも珍しいという波形虫籠窓や千本格子のことなど、細田さんは歴史の苦手な私に解り易く説明してくださいました。新旧さまざまなものが混在した生活感のある現在の池田うだつ通り、とても自然でほっとします。

池田町の新しい顔と古い顔をみることができた今回の散策、しみじみと時代の流れを感じとることができました。秋の終わりの一日は短いものです。いつの間にか辺りは夕暮れ。いつになくしんみりと、過去のことや将来のことを思いながら、夕食を待つ家族のもとへ車を走らせました。

1996年11月掲載


思い出して一言

この原稿提出に関しては、信じられないことがおこってしまいました。

ちゃんと原稿提出できたと思って一息ついた翌日、新聞社の担当の人からTEL。「郷土料理の店、火事になったらしいぞ!」そう、掲載原稿にはないけれど、私は郷土料理の店の取材をして、原稿にも描いて、イラストまで描いてたんです。

あと掲載日までに3日しかない!でもやりなおすしかない!私の頭はパニック状態。そこで役立ったのが、締めきりに追われる生活で培った私の底力。なんとか一晩の徹夜でやり直し完了。ゼイゼイ言いながら新聞社に駆け込むと、担当の四宮さんがクッキー持って「お疲れさん」。さりげない気づかいが結構うれしいものでした。

ほんとに人生何が起こるかわかりません。心して生きていきましょう!(2000.2)


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